繰り上げ受給のデメリット

      2016/09/29

「繰上げ支給」とは

老齢基礎年金は、原則65歳から支給開始ですが、60歳から65歳になるまでの間に「老齢基礎年金の繰上げ支給」を請求することができます。年金の支払いは、請求月の翌月から開始されることになります。ただし、「国民年金の任意加入被保険者」は「老齢基礎年金の繰上げ支給」をすることができません。

「繰上げ支給」の支給率

「老齢基礎年金の繰上げ支給」をすると、通常は65歳から支給されるものなので、年金額に一定の減額率をかけて減額されることになります。
詳細は「年金もらえる?」をご覧ください。

減額率 = 0.005 × 繰上げ請求した月数から65歳になる前月までの月数

「繰上げ受給」のデメリット

「老齢基礎年金の繰上げ受給」をすると、早い時期から年金が受給できる反面、デメリットもありますので注意が必要です。

(1)「国民年金の任意加入被保険者」になることはできない。

保険料納付期間が40年に満たないために年金額が低い場合、任意加入して増額することができますが、それができなくなります。

(2)「障害基礎年金」が支給されない

繰り上げ請求後は、原則として障害に対する保障がなくなります。障害基礎年金は、65歳に達する日の前日までに初診日のある病気・ケガで、障害の状態になったときに支給される年金です。「老齢基礎年金の繰上げ請求」をすることで「65歳到達」とみなされますので、繰上げ請求をすると65歳以後と同じ取り扱いとなり、障害に対する保障がなくなります。
現在の病状等が悪化し障害等級に該当したり、新たに障害等級に該当する障害者になっても「障害基礎年金」は支給されません。

(3)「寡婦年金」が支給されない。

「寡婦年金」とは、受給資格期間(国民年金に保険料を支払った期間が25年以上)を満たした「夫」が、老齢基礎年金が支給される前に死亡した場合、「妻」に対して60歳から65歳まで支給される未亡人のための年金です。
しかし、死亡した夫が老齢基礎年金を繰上げ受給していた場合は、妻に寡婦年金を残すことはできません。また、妻が老齢基礎年金を繰上げ受給していた場合は、夫が残した寡婦年金を受給することはできません。
また死亡一時金についても、死亡した夫の要件が「障害基礎年金・老齢基礎年金を受給したことがないこと」となっています。そのため、繰上げ受給をしていた夫は、死亡一時金も残すことができません。いずれも繰り上げにより老齢年金を受給することになり、支給要件から外れるためです

(4)「遺族厚生年金」を支給される場合、自分自身の「繰上げ支給した老齢基礎年金」は65歳まで支給されない

厚生年金の加入期間のある夫が死亡した場合、要件を満たしていれば、妻に遺族厚生年金の受給権が発生します。
しかし妻が老齢基礎年金の繰上げ受給をしていた場合は、65歳までの間は遺族厚生年金と繰り上げた老齢基礎年金の両方を同時に受給することはできません。どちらか一方の選択になりますが、ほとんどの人が「遺族厚生年金」>「繰上げた老齢基礎年金」となるため、遺族厚生年金を選んでいます。
65歳以後は、遺族厚生年金と老齢基礎年金は両方受給できますが、この場合の老齢基礎年金は、繰上げにより減額された老齢基礎年金です。その結果、繰上げをしない方が良かったというケースも見受けられます。

「繰上げ受給」をすると、何歳で追いつかれてしまうか

「繰上げ受給」をすると老齢基礎年金が減額されて支給されますが、それでは、65歳前に「繰上げ」した老齢基礎年金は、65歳から満額受給する老齢基礎年金(「繰上げ」しない老齢基礎年金)にいつの時点で追いつかれてしまうのでしょうか。
ざっと計算してみると、60歳に支給開始した人の総支給額は、72歳の時点で、65歳支給開始の人に抜かれます。

また、65歳支給開始の人は、82歳の時点で、70歳支給開始の人に抜かれます。

支給総額だけを考えると、72歳までなら60歳支給が、82歳までなら65歳支給が、それ以上長生きするなら75歳支給が一番多くなります。

60歳の時点で決めれば良い(いつでも受給開始できるから)

厚生労働省の「年金制度基礎調査」によれば、繰上げ支給にした理由は、男性では「年金を繰り上げないと生活出来なかったため」が、女性は「減額されても、早く受給する方が得だと思ったため」が多くなっています。この2つに、「生活の足しにしたかったため」を加えた3つが、繰上げ支給の主な理由となっています。

また、週刊誌などで年金の繰上げ支給を勧める記事の場合、「将来年金の支給開始年齢が遅れる」や「年金制度が破綻する前に、少しでも現金を手にしておこう」とか「これから来るインフレの前に現金を手に入れよう」という理由が語られます。

単純に金額だけをとらえると前述のように遅く受給する開始する方が長生きすれば有利です。ただ、「生活費が足りない」とか「年金制度が破綻する前に・・・」とか言う理由は本人の考え方一つです。老齢年金は、ある程度の年齢に達し、労働して対価を得ることができなくなった時に備えるものです。

日本人の平均寿命は、女性が86.83歳、男性が80.50歳で、いずれも80歳を越えています。65歳まで働くことができたとしても、まだ長い余生が残っています。

それを考えると、60歳から65歳までの期間に収入が期待できるのであれば、繰り上げ支給をしないで将来の年金額を増やすという選択も正しいでしょう。2015年現在では大多数の方が、再雇用されて「何らかの収入を得ることができるはずです」

実際に、新たに年金をもらい始める人に限れば、繰上げ支給を選択している人は約1割に留まっています。

繰上げ支給の申請は、60歳の誕生日を迎える3カ月前の届く「裁定請求書」の提出と一緒に行ないます。つまり、60歳の時点で、支給開始時期を決定できます。その時点の経済状況や健康状態、厚生年金や民間年金保険の加入状況などを総合的に見て判断しましょう。

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