定年退職後の医療保険

   

定年退職後の医療制度

会社に勤めている場合は協会けんぽ、または健康保険組合に加入している。しかし、定年退職するとその資格を失い、本人および扶養家族もみんな健康保険の保障を受けられなくなってしまう。健康保険証がないと病気やケガをしたときの医療費は全額自己負担しなければならないので、退職や転職、失業など被保険者資格を喪失した場合は、新しい健康保険への加入手続きを速やかにする必要がある。

定年退職後に加入できる健康保険は3つ

定年退職後にすぐに再就職できた場合は、新しい会社の健康保険に加入する。一方、何らかの理由ですぐに再就職しなかった場合は、次の3つのうちいずれかを選ぶことになる。

家族の健康保険の被扶養者になる

ご存じのように会社員の健康保険には、国民健康保険にはない「被扶養者」という概念があり、同居している3親等以内の親族なら「被扶養者」となり健康保険に加入できる。一定の年収要件などを満たせば、配偶者、子ども、孫、父母、祖父母、曾祖父母、兄弟姉妹は同居していなくても被扶養者になれる。
会社員の健康保険料は、給与に保険料率をかけて決まるが、扶養家族が何人いても同額で、負担が増えることはない。もちろん、被扶養者が保険料を負担することもない。
ただし、被扶養者になれるのは、原則的に130万円未満(従業員501人以上の企業の労働者は106万円未満)で、健康保険加入者の収入の半分未満の人だ(70歳未満の人の場合)。退職後に雇用保険の失業給付(基本手当)をもらっていると収入とみなされるので、収入要件を超えると、被扶養者として健康保険に加入することはできない。
その場合は、残りの2つのいずれかを選択することになるが、有利なのは「任意継続被保険者」だ。

任意継続被保険者になる

任意継続被保険者は、勤務先を退職した人が次の勤務先が決まるまでの間、勤めていた間に加入していた健康保険に引き続き加入できる制度である。勤続期間が2ヵ月以上ある人が、退職後20日以内に手続きすれば、最長2年間任意継続被保険者となることが可能となっている。

任意継続被保険者の保険料は事業主負担がなくなり、全額本人の負担になるが、それまでの本人の平均月収(標準報酬月額)か被保険者すべての給与の平均かの、いずれか低い額に保険料率をかけたもので上限額は決まっている。(協会けんぽの場合退職時の標準報酬月額が28万円が上限)その保険料で家族みんなの保障を得ることができる。

任意継続被保険者になると、傷病手当金や出産手当金はもらえなくなるが、高額療養費は在職中と同様の給付内容となっている(協会けんぽの場合)健保組合では規約によりさらに有利な付加給付がある場合もある。さらに資格喪失後の継続療養に該当する場合傷病手当金や出産手当金も支給される。

市区町村の国民健康保険に加入する

一方、国民健康保険料は、前年の収入や家族の人数などによって決まるため収入が少なくなっても割高な保険料を負担しなければいけない。また、高額療養費は法定給付のみだ。
保険料と給付の両面から任意継続被保険者のほうが有利なので、会社員や公務員は退職後もそれまでの勤務先の健康保険を継続するケースが多いようだ。
ただし、
会社を退職した方のうち、雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇などによる離職)または特定理由離職者(雇い止めなどによる離職)として失業等給付を受ける離職日時点で65歳未満の方は、前年の給与所得を「100分の30」とみなして(実際の30%分の金額で)計算するので、所得割(所得に対する料金)が軽減されるほか、世帯全体の所得状況によっては均等割・平等割(基本料金部分)も軽減される場合があります。その期間は離職日の翌日の属する月~その月の属する年度の翌年度末までです。

定年退職した人は特例退職制度を利用したい

定年退職した人が優先的に利用したいのが、「特例退職被保険者制度」だ。
特例退職被保険者制度は、主に大企業の健保組合にある制度で、すべての方が受けられるわけではないが、定年退職した人が、75歳になって後期高齢者医療制度に移行するまでの間、在職中と同様の給付を受けられる(障害認定を受けた場合は65歳まで)。保険料は、任意継続被保険者や国民健康保険に比べると安くなることが多いので、利用できる場合は積極的に利用したい。

年齢や職業に関係なく、誰だって病気やケガをする可能性はある。そのとき、健康保険に加入していないと医療費は全額自己負担となる。退職や転職、失業、独立などで、働き方が変わったときは、忘れずに新しい健康保険の手続きをしておこう。

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