得する年金のもらい方
国民年金25年以上の加入で65歳から終身受取り
国民年金から支給される老齢基礎年金は「誰が」「いつから」もらえるのでしょうか?
まず「誰が」については、「保険料を払うか、免除された期間が(原則)25年以上ある人」となります。この25年という期間を満たさなければ、年金は1円ももらえません。ただ、生年月日等によって期間短縮措置が設けられていますし、現在(平成28年)期間を短縮する方向で法改正が検討されています。
次に、「いつから」 については、「(原則)65歳から」亡くなるまで受け取ることができます。受け取れる金額については、現在、(平成28年度)40年間全て保険料を払い込んだとすると、年額780,100円になります。この満額の数字が1999年度の804,200円をピークに下がり続けています。受け取れる数字が変動しているのは各種の調整措置(物価変動などによる)がもうけられているためです。世の中がデフレなら受け取る年金額は下がっていくことになります。
以上が老齢基礎年金の基本的受け取り方です。基本というのは、年金を早く受け取ったり、遅く受け取ったりする方法も法律に規定されているからです。
繰り上げ受給
様々な理由で65歳よりも早く受け取りたい人は「繰上げ受給」制度があります。「繰上げ」制度については、最大5年間前倒しで受け取ることができますが、年金額は一生涯減額になります。65歳になったら満額もらえるわけではありません。ここを間違って覚えている人、結構いますから注意してください。
昭和16年4月2日以降生まれの方(ほとんどの方)の全部繰り上げ受給
繰上げの方法には全部繰上げと一部繰上げがあります。このページでは全部繰り上げに絞ってお話しします。
繰上げ支給の老齢基礎年金を受けても特別支給の老齢厚生年金は支給されます。
女子で昭和16年4月2日から昭和21年4月1日までの間に生まれた人は、老齢基礎年金の全部繰上げの請求ができます。
特別支給の老齢厚生年金の定額部分支給開始年齢が61歳から64歳とされている人(男子は昭和16年4月2日から昭和24年4月1日まで、女子は昭和21年4月2日から昭和29年4月1日までの間に生まれた人)は、老齢基礎年金の全部繰上げまたは一部繰上げの請求ができます。
全部繰上げを請求した方は下記減額率によって計算された年金額が計算されます。
減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
全部繰上げを請求する際のデメリット
- 国民年金に任意加入中の方は繰上げ請求できません。また、繰上げ請求後に任意加入することはできず、保険料を追納することもできなくなります。
- 受給権は請求書が受理された日に発生し、年金は受給権が発生した月の翌月分から支給されます。受給権発生後に繰上げ請求を取り消したり、変更したりすることはできません。
- 老齢基礎年金を全部繰上げて請求する場合、特別支給の老齢厚生 (退職共済) 年金のうち基礎年金相当額の支給が停止されます。報酬比例部分は支給されます。
- 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、事後重症などによる障害基礎年金を請求することができなくなります。
- 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、寡婦年金は支給されません。また、既に寡婦年金を受給されている方については、寡婦年金の権利がなくなります。
- 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、65歳になるまで遺族厚生年金・遺族共済年金を併給できません。
- 老齢基礎年金を繰上げて請求すると、下記の減額率に応じて生涯減額されます。このため、受給期間の長短により、繰上げ請求しない場合よりも受給総額が減少する場合があります。
繰上げ減額率早見表
請求時の年齢 | 0カ月 | 支給率 年金額 | 1カ月 | 2カ月 | 3カ月 | 4カ月 | 5カ月 | 6カ月 | 7カ月 | 8カ月 | 9カ月 | 10カ月 | 11カ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
60歳 | 30.0 | 70.0% 546,070円 | 29.5 | 29.0 | 28.5 | 28.0 | 27.5 | 27.0 | 26.5 | 26.0 | 25.5 | 25.0 | 24.5 |
61歳 | 24.0 | 76.0% 592,876円 | 23.5 | 23.0 | 22.5 | 22.0 | 21.5 | 21.0 | 20.5 | 20.0 | 19.5 | 19.0 | 18.5 |
62歳 | 18.0 | 82.0% 639,682円 | 17.5 | 17.0 | 16.5 | 16.0 | 15.5 | 15.0 | 14.5 | 14.0 | 13.5 | 13.0 | 12.5 |
63歳 | 12.0 | 88.0% 686,488円 | 11.5 | 11.0 | 10.5 | 10.0 | 9.5 | 9.0 | 8.5 | 8.0 | 7.5 | 7.0 | 6.5 |
64歳 | 6.0 | 94.0% 733,294円 | 5.5 | 5.0 | 4.5 | 4.0 | 3.5 | 3.0 | 2.5 | 2.0 | 1.5 | 1.0 | 0.5 |
65歳支給時の金額は、40年間納付した満額の金額です。ちなみに、繰り下げ受給したときの割増額は
65歳 100.0% 780,100円 65,008円
66歳 108.4% 845,628円 70,469円
67歳 116.8% 911,157円 75,929円
68歳 125.2% 976,685円 81,390円
69歳 133.6% 1,042,214円 86,851円
70歳 142.0% 1,107,742円 92,311円
です。なんと、60歳支給開始と、70歳支給開始では、年金額が2倍も違います。
なお、支給が始まるときに確定した金額は、一生変わりません。つまり、繰り上げ支給した人は、どこかの時点でしなかった人よりも総支給額が少なくなります。ざっと計算してみると、60歳に支給開始した人の総支給額は、72歳の時点で、65歳支給開始の人に抜かれます。また、65歳支給開始の人は、82歳の時点で、70歳支給開始の人に抜かれます。支給総額だけを考えると、72歳までなら60歳支給が、82歳までなら65歳支給が、それ以上長生きするなら75歳支給が一番多くなります。なお、 老齢基礎年金を繰下げすると「付加年金」も繰下げ支給されます。増額率は老齢基礎年金と同じです。
昭和16年4月1日以前に生まれた方について
老齢基礎年金の繰上げ請求は年単位で計算され、請求月の翌月分から減額されて支払われます。この減額率は一生変わりません。
繰上げ請求と減額率
請求時の年齢 | 減額率 |
---|---|
60歳0ヵ月~60歳11ヵ月 | 42% |
61歳0ヵ月~61歳11ヵ月 | 35% |
62歳0ヵ月~62歳11ヵ月 | 28% |
63歳0ヵ月~63歳11ヵ月 | 20% |
64歳0ヵ月~64歳11ヵ月 | 11% |
得する受給方法はあるのか?
繰上げ支給にした理由は、「年金を繰り上げないと生活出来なかったため」、「減額されても、早く受給する方が得だと思ったため」、「生活の足しにしたかったため」が、繰上げ支給の主な理由となっています。
年金制度の存在理由は、「長生き」というリスクに備えることが主目的です。ある程度の年齢に達し、働けなくなり、収入が無くなった時にあてになるのが年金制度なのです。日本人の平均寿命は、80歳を越えています。65歳まで働くことができたとしても、まだ15年以上余生が残っています。
それを考えると、60歳から65歳までの期間に継続雇用を選択して、繰り上げ支給をしないで将来の年金額を増やすという選択も正しいでしょう。少しでも後に受給開始すればこの分一月あたりの受給額は増えます。継続雇用や個人年金保険と組み合わせて快適な老後ライフを送りたいものです。
繰上げ支給の申請は、60歳に提出する「裁定請求書」の提出と一緒に行ないます。このときまでには決めておきましょう。
繰り下げ受給
遅くから受け取りたい人については「繰下げ」制度が設けられています「繰下げ」することで年金額は増額されます。繰り下げ受給についてはまたの機会に譲ることとします。